トップチームより一足早く、セレッソ大阪堺レディース、そして下部組織であるセレッソ大阪堺ガールズのリーグ戦が終了した。
堺レディースはなでしこ1部リーグ2度目の挑戦。前回(2018年)は最下位に甘んじていたが、今季は8勝6分4敗という好成績で4位に食い込んだ。
今回はホーム最終戦となった11月15日の試合を振り返りながら、改めてその成長ぶりを伝えていきたい。
苦い思い出
セレッソ大阪が女子サッカーチームを創設したのが2010年、以来地域リーグからチャレンジリーグ(なでしこリーグ3部にあたる)なでしこリーグ2部へと着実にステップアップを続けてきた。ほぼすべての選手が育成組織であるアカデミー出身の生え抜きであり、技術力や組織力が持ち味だった。
だが多くの選手が10代であり、年上の選手相手に空中戦や競り合いで苦戦を強いられた。2018年シーズンはフィジカル、テクニック両面を持ち合わせる1部リーグでの戦いとあり、この弱点がより顕著に表れていた。結果、最下位に沈み1年で2部に降格している。
この日の相手、INAC神戸レオネッサも中軸には経験豊富な中堅どころが並ぶ。2011年の女子ワールドカップドイツ大会で日本を世界一に押し上げたレジェンドも名を連ねる豪華なメンバーだ。2年前ならサポーターである自分自身ですら気おくれしたことだろう。
フィジカルでも負けない若き「さくらなでしこ」たち
しかし、この日の堺レディースは2年前とは全く違っていた。劣勢であってもセンターバックに入った宝田選手、ゴールを守る福永選手を軸に失点を許さない。いやむしろ、フィジカルで押し返していた。速く、高く、強く、たくましいプレーは感動すら覚える。
中盤を引きしめる林選手と脇阪選手も長年チームをけん引してきた運動量と技術で流れを変え、チャンスを演出していく。そうして最前線には2年前を知らない2人の高校生プレーヤーがゴールチャンスをうかがっていた。
恐れ知らずの高校生と、恐れを乗り越える高校生
この日の前線には小山選手と浜野選手がいた。ともに高校1年生、現セレッソ大阪代表取締役社長の森島寛晃氏が日韓ワールドカップで得点を決めた2年後、3年後に産まれている。2018年にはトップチームではなくアカデミーやチャレンジリーグを主戦場としていたチーム最年少世代だ。
小山選手は強いメンタルで壁を越えていく努力型、先輩にもグイグイ意見を言える度胸も持っている。一方、浜野選手を一言で表すなら天才型、どんなプレーをするのか予測不可能なストライカー。
前半、給水タイムギリギリにゴールを奪ったのは小山選手。ゴール前でマーカーを背負ってボールを受けるが、素早くターンしキーパーの手が届かない左上隅に丁寧に撃ち込んだスキルフルなゴールだった。一方、後半に生まれた浜野選手のゴールもらしさが垣間見えるものだった。
後半80分を過ぎたあたりで相手ディフェンスラインにプレスをかける選手はそういない。そして、そのままドリブルで単騎駆け上がる選手などほとんどいない。さらに、そこからキーパーの頭越しに無回転のブレ球を撃って決める選手となると、日本では浜野選手1人ではないだろうか。ついでに言うと、感極まって涙を流し、先輩たちに抱きしめられる愛おしさを持っている選手も、恐らく浜野選手だけだろう。
課題と言えば……
ホーム最終戦は「観ていない人は損をしている」と言えるほどのベストゲームだった。夏の盛り、日テレベレーザに1-10で大敗したチームは、わずか3か月で1部リーグ強豪を撃破するまでに成長したのだ。今でも十分に素晴らしいチームだが、選手全員伸びしろがたくさんある若手で、1部定着やタイトルが狙えるほどの存在と言える。
だがまだ課題も残されている、ヒロインインタヒューだ。クラブスタッフにうながされた小山選手と浜野選手はガチガチに固まってしまって、ピッチ上では見せないようなあどけなさを残してしまった。
堺レディースのサポーターのみならず、チームメイトたちも「空気読んでサラッと切り上げてくれ!」と祈っていたが、「浜野選手、得点シーンはいかがでしたか?」というアナウンスに「んー、えー……。ボールが来たんで、打ったら入りました。」と答えたあたりでずっこけてしまった。
彼女たち以外にも紹介したい選手がたくさんいる。下部組織であるセレッソ大阪堺ガールズにもトップチームで通用する若き選手がたくさんいる。そんなチームの活躍を1000円程度で観られるなんて、まったく日本の価値観はどうかしている。
写真・文:牧落連
※写真は選手の方から許可をいただいて掲載しております。