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2021JリーグYBCルヴァンカップ決勝レポート~希望だけを持って埼玉を去る~

2021年10月30日に行われたYBCルヴァンカップ決勝は、それまでの決勝とは何もかもが変わっていた。2020年1月16日に国内初のCOVID-19感染者が報告されて以降、日本中が変化したのと同じように。

埼玉スタジアム2002の収容人数は球技専用のスタジアムでは国内最高の63,700人だけれど、用意されたチケットはその1/3にも満たない20,000席。観客が社会的距離を保てるよう1階席は4席に1席、2階席も2席に1席しか使用できなかったためだ。緊急事態宣言が解除され新規感染者も減少傾向、加えてワクチン接種者数も増えてはいるが、予断を許さない状況なのは今も変わらない。

サポーターの意地がスタジアムを彩る

そんな100年に1度の大過の中でも、セレッソ大阪、名古屋グランパス両チームのサポーターは選手を鼓舞するために最大限の努力をした。それぞれのゴール裏はコレオグラフィーで彩られ、太鼓と拍手だけとは思えない大音響がスタジアムを包んだ。タイトルのかかった試合だからこそ得られる高揚感は2017年のYBCルヴァンカップ決勝となにも変わらなかった。

チケット争奪戦に敗れギリギリのところで2階席のチケットを譲ってもらえた私は、その風景をうらやましく見ていた。ゴール裏や1階席とは切り離された空間で、ただ傍観するしかないのはなんとも虚しいものだった。

2階席だからこそ見えた「空気」

けれど、2階席には2階席にしかないメリットもある。試合やサポーターの様子を高い場所から眺めることができたのは幸いだった。

最初に感じたのは、サポーターが作り出している空気と試合の流れとが密接にリンクしているということだった。サッカーをスタジアムで観たことがない人ならば、選手がいいプレーをした時に応援の熱量が上がるのではと思うかも知れない。けれど、少なくともこの試合ではサポーターの熱が先にあり、その熱が選手のプレーを引き出していた。

両チームを客観的に見れば選手層の厚さもチームの完成度も名古屋の方が上だ。3日前に天皇杯準々決勝が行われ、セレッソに敗れたことで修正点も見えていただろう。実際、試合開始から10分ほどは名古屋のペースだった。けれどその流れはセレッソゴール裏の空気によってせき止められた。

今のセレッソゴール裏は若い。ぐっさんのようなベテラン……いや、応援しているキャリアが長い人もいるが、応援の中心を担うのは体力と情熱を兼ね備える10代20代の若い子たちだ。彼ら、彼女らはすべての試合で勝利を求めているし、そのためには深夜バスに揺られることも早朝に1万を超える座席にコレオグラフィー用のボードを貼り付けて回ることもいとわない。

この熱気がセレッソの選手を動かしはじめた。山田寛人、坂元達裕、西尾隆矢、瀬古歩夢、サポーターと同世代の選手たちは徐々にペースをつかみ、普段どおりのプレーを披露してくれた。

名古屋の空気が試合を回す

流れを変えたのも空気なら、試合を動かしたのも空気だった。後半開始に合わせ小菊昭雄監督は清武弘嗣を投入した。セレッソのサポーターたちはこの選手交代によってチームがどう変わるのか傍観してしまった。後半開始直後に名古屋がコーナーキックを獲得してもその流れは続いた。

一方、名古屋のサポーターはこのコーナーキックに懸けていた。1階席も2階席も、全員がこれまでで1番大きな手拍子を続け名古屋を鼓舞した。記録の上では名古屋のFW前田直輝のゴールになってはいるが、彼を導いたのはスタジアムにいる全ての名古屋サポーターだった。

手堅い守備を信条とするマッシモ・フィッカデンティのチームに先制点を与えてしまったのは迂闊というほかない。名古屋のゲームプランは明白、リードを奪えばゴールに鍵をかけ、ボールを奪えば即カウンター。わかってはいるけれどリスクを覚悟で攻めなければいれけない。乾貴士、大久保嘉人、それに松田陸。海千山千のベテランが数少ないチャンスをモノにしようとするが追いつかず、逆にカウンターで失点。この時点で試合は決した。

悲劇は歓喜への序章


14時55分ごろ、主審家本政明がホイッスルを鳴らし試合は終わった。2-0というスコア以上に思うようなプレーができなかった。若い選手達はピッチに突っ伏したまま動けないでいた。Twitterでも若いセレサポは本当に悔しがっていた。僕はその様子を観ていてどこか安堵していた。

セレッソができた頃から応援している年配のサポーターはどこか負け慣れているところがある。2000年と2005年の長居の悲劇、そして3度の天皇杯準優勝、セレッソは5度のチャンスをどれも悲劇的に逸してきた。ここまで痛めつけられると「どうやったらタイトルが獲られるのだろう」「死ぬまでに1度はタイトルとるところを観てみたい」と考えてしまうものなのだ。

一方、そんな悲劇を知らず、2017年の2冠達成を強烈に覚えている若いサポーター達はいい意味で貪欲だ。全ての試合に勝利したい、獲得できるタイトルは全て獲りたい。そんな気持ちが、残留争いに直面していたボロボロのチームを決勝へと導いてくれた。彼らが成長を続ければ、セレッソはより強くなれると確信している。

新幹線にまで残っていた、闘いの余韻

最後に帰路の話をしようと思う。チケット争奪戦に敗れ、試合でも敗れ、打ちひしがれた私は新幹線の車中で駅弁を食い、ハイボールを流し込んで記憶を飛ばそうとした。

さんざっぱら飲み食いした後トイレに向かうと、そこでようやくユニフォーム姿の名古屋サポがそこかしこにいる事に気づいた。私が鈍感だったのもあるけれど、彼らはあまりに静かで仲間同士の会話すらできないほど疲れた様子だったのだ。そんな有様を見て、埼玉スタジアム2002で彼らが見せた熱のある応援は「ここでぶっ倒れてもいい」という捨て身の応援だったのだことにようやく気づくことができた。

タイトルは生半可な気持ちでは獲れない。フロントはスポンサー料とサポーターのチケット代、グッズ代、リーグからの分配金をかき集め、強化部はそれを元手に選手とコーチを獲得する。監督はその選手たちを指導し、サポーターがその全てを支える。この全てが上手くかみ合わなければ日本一のクラブになどなれないのだと痛感した瞬間だった。

幸いにもセレッソは天皇杯を残している。準決勝の相手は浦和レッドダイヤモンズ、決勝の相手は川崎フロンターレ対大分トリニータの勝者だ。どのチームも簡単に勝てる相手ではないけれど、今のセレッソには「次こそタイトルを獲ってみせる」という強烈なモチベーションがある。12月19日こそ「菊の季節に桜が満開」といこう。

(※ラストのコメント意味わからんという人は、昭和産まれで競馬好きのおじさんおばさんに聞いてみてください。)

 

写真:Shunsuke・牧落連 / 文:牧落連

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