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セレッソ大阪堺レディース2021シーズンレポート~時計じかけのブロッサム~

10月17日、2021年なでしこリーグ全日程が終了した。セレッソ大阪堺レディース(以下、堺レディース)は10勝8分4敗、勝点38で3位に食い込む大活躍だった。2020年シーズンの主力選手が海外の女子プロリーグやWEリーグに移籍し、ほとんどの選手が下部組織であるセレッソ大阪堺ガールズからの昇格組。一時はどうなることかと思っていたけれど、いい意味で予想を裏切ってくれた。

なぜ堺レディースはこれほどまで活躍ができたのか。筆者は今年はわずか4試合しか現地観戦できなかったが、だからこそわかった3つの要因を紹介していきたいと思う。

要因その1 女子三日会わざれば刮目して見よ

堺レディースは若い。もともと若いチームだったけれど、ガールズの選手たちが加わったことでより若くなった。彼女たちは伸びしろがたくさんある時期に日本最高峰のリーグを戦い、多くのことを学ぶことになった。開幕時はフィジカルも経験も足りない状態だったが、シーズン終盤では相手を圧倒する個の力を手に入れるまでになっている。

左サイドバックとして大活躍した百濃実結香(みゆか)選手は小柄で、大柄な選手との競り合いでは力負けすることが多かった。ところがシーズン終盤になると加速力とドリブルスキルで相手を振り切るようになり、フィジカルコンタクトに負けないプレースタイルを習得するまでになった。

また、センターフォワードでの出場が目立った田中智子選手も、シーズン終盤にはどんな相手にも競り負けず、確実にボールキープできるようになっていた。前線で起点を作れなかった堺レディースにとって欠かせない存在の一人だ。

センターバックとして大活躍した荻久保優里(ゆうり)選手も、もともとはテクニックとポジショニングの旨さが持ち味のボランチだった。だが、コンバートによってフィジカルが補完され、全てのプレーが標準の上を行くスペシャルな選手へと成長を遂げている。

要因その2 ローテーションとマルチポジションが生み出した「渦」

選手の驚くべき成長、その原因は若さだけではない。竹花友也監督の指導や選手起用も大きな要素の一つだった。

堺レディースの攻撃の核は間違いなく小山史乃観(しのみ)選手だ。状況判断に優れ、すぐさまチームメイトに的確な指示を出す姿はヨハン・クライフに似ているとさえ思う。だが、彼女ほどの選手でも全試合フル出場は果たされていない。堺レディースではフィジカルやメンタルの状態を見た上で、その時点でのベストメンバーが選び出されているのだ。

先発メンバーがローテーションできれば選手の故障リスクが下がるし、控えメンバーのモチベーションも維持できる。まさに一石二鳥の妙案と言える。

また、ほとんどの選手が複数のポジションで出場している点も見逃せない。ディフェンダー登録の田畑晴菜選手は本職のセンターバック以外にセンターフォワード、サイドハーフ、ウイングとして起用されているし、小柄な小山選手もせンターフォワードとしてプレーすることがある。

このポジションを固定しない選手起用は堺レディースの伝統の一つだ。現ワシントンスピリット所属の宝田沙織(さおり)選手は現在はセンターバックとして起用されているが、キャリアの中でゴールキーパー、ディフェンダー、サイドハーフ、センターフォワードと目まぐるしくポジションを変えている。

宝田選手のインタビュー記事を読んだことがあるが、センターバックからセンターフォワードにコンバートされた際には「自分がされて嫌なプレー」を意識することで新しい武器を手に入れられたという。違うポジションだからこそ見える風景があるのだろう。

ちなみに、小山選手がセンターフォワードの位置に入った際は相手と無理に競り合わず、味方から供給されたロングボールを後ろ向きでめっちゃトラップして好機を作り出している。そんなんできひんやん普通。

 

ローテーションとマルチポジションに慣れてくると、選手交代なしにシステム変更ができるようになる。ホーム最終戦となったコノミヤ・スペランツァ大阪高槻戦では左サイドに入った小山選手が相手右サイドの守備の脆さに気づくとすぐさまチームメイトにアドバイス。テクニックとキレの小山選手、スピードの百濃選手、高さと速さの田畑選手がローテーションで相手右サイドを突破する堺レディースならではのシーンを目撃できた。

サイドバックがセンターフォワードになり、センターバックがウイングになり、センターフォワードがサイドハーフになり……。目まぐるしくポジションを入れ替え相手を追い込んでいく様子は、まるで一艘の船を飲み込む巨大な渦のようだった。

要因その3 大黒柱、筒井梨香キャプテン

これほど特殊な選手起用と選手育成を可能にしたのは竹花監督以下コーチ陣の努力と工夫によるものだが、リーグ3位という結果が残せたのはピッチ上にジェネラル、筒井梨香(りこ)選手の尽力によるところが大きい。

筒井選手はWEリーグや海外のクラブに移籍していった選手たちと同世代にあたる。フィジカルが強く、長短のフィードも正確、他クラブからのオファーがあってもおかしくない。けれど、彼女は堺レディースを引っ張る道を選んだ。

堺レディースの試合をスタジアムで見たことのある人なら、筒井選手の鬼気迫る表情を一度は目にしたことがあるはずだ。試合の勝敗は自分のプレー次第だと言わんばかりの気迫はスタンドからも感じ取れるほど、ピッチに立っている他の選手も何かしら感じたに違いない。

トップが汗をかいている組織は強い。筒井選手がボールを持つとフリーになっている選手全員が「梨香さん!」と声をかけるのが当たり前になった。ポジションがどこであれ、久しぶりの試合であれ、自分の背中を筒井選手が押し支えてくれる。それが若い選手にとってどれほど心強いことか。

 

一方、筒井選手はキャプテンとして選手の成長をつぶさに見てきた。彼女たちにまだまだ伸びしろがあると感じたのだろう、ホーム最終戦の挨拶でこう言い放った。

「来季は優勝目指してがんばっていきます。」

彼女は楽天主義者ではない、だから実現できないことは口にしない。その筒井選手から出た優勝宣言に魂が震えた。来年の今頃は優勝を伝える記事を書くことになるのだろうと、今からワクワクしっぱなしでいる。

追記

現在、堺レディースは男子サッカーで言うと天皇杯にあたる皇后杯に参戦し、順調に勝ち上がっている。準々決勝進出を懸けた4回戦の相手は、ノジマステラ神奈川相模原。昨季堺レディースを支えた脇阪麗奈選手、野島咲良選手、井上陽菜選手が所属するWEリーグの強豪だ。

試合日は12月25日(土)、会場は我らがホームヤンマースタジアム長居だ。入場料は無料だから、カイロをこれでもかと仕込んでスタジアムに足を運んでいただきたい。そして、堺レディースの戴冠のためにできる限りの応援をしよう。

 

写真・文:牧落連

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