おはよう、こんにちは、こんばんは、セレサポ.netライターの牧落連(まきおちれん)です。
快勝となった開幕大阪ダービー。今年はスタートダッシュ成功か?と期待したのもつかの間、リーグ戦はそこから1勝もあげられず3分3敗と低迷。一時は18位と降格圏にまで順位を落としてしまうこともありました。
波に乗り切れないまま臨んだ第8節の相手は、今年初昇格を果たしたファジアーノ岡山。彼らとの対戦は9年ぶりとなります。因縁浅からぬチームからホーム初勝利をもぎ取ったレポート、ぜひお付き合いください。
9年前も雨だった、2016年J1昇格プレーオフ
前回の対戦は2016年12月4日、場所は同じキンチョウスタジアム(当時)でした。セレッソは岡山との接戦に勝利し、J1復帰を果たします。岡山にとっても初昇格のチャンスだったわけですが、この1試合に敗れ、夢を絶たれてしまいました。
一方セレッソは翌2017年、復帰初年度にルヴァンカップを勝ち取り初タイトルを獲得、天皇杯も制して2冠達成を果たしています。コロナ禍を耐え抜いた2021年にはキンチョウスタジアムの本格改修が完了し、ヨドコウ桜スタジアムと名称変更し再オープン。現在のセレッソ大阪の起点となったのが9年前の岡山戦だったと言っても過言ではありません。
1試合、わずか90分でその後9年間のクラブの運命が変わるのがサッカー、Jリーグの凄さであり怖さなのです。もちろんタイトルを獲得すること、人気が出ることもいいんですけれど、負けたらまずいことになる試合をしないようにする堅実さも必要なんじゃないでしょうか。
はっきりしてきたパパスセレッソの長所と短所
ここまでのパパスセレッソは堅実とは真逆、点の取り合い上等の攻撃的なチームを目指しています。原稿を書いている2025年4月4日時点で総得点13はリーグトップで、無得点で終わったのは横浜FC戦のみ。一方で失点も多くて13、リーグワースト3位ですべての試合で失点しています。

ラファエル・ハットン選手が相手の守備ラインと駆け引きして縦の深みを、北野颯太選手が左右に動いて横のスペースを作り、そこに左サイドバックやボランチを侵入させる。そこから中央を崩すか、ルーカス・フェルナンデス選手やチアゴ・アンドラーデ選手、柴山昌也選手、阪田澪哉選手といったサイドで活きるタイプの選手に預けるかが基本。決定機が作りやすいボックス内にどれだけ選手を侵入させられるかをベースにしているように見えます。
これだけ分厚い攻撃を仕掛けるために、それぞれの選手は守備の立ち位置から大きくポジションを変えています。不用意なボールロストから失点を許すのはそのためです。守備ではサイドに圧縮して前で奪い切るのをベストとしていますが、詰める前に正確なロングボールを対角に蹴られると振り回されて厳しいです。
もうひとつの特徴は選手のローテーションや積極的な交代策ですね。色々な選手を組み合わせ、合わなければバンバン代えていく。この試合は選手起用の思い切りの良さがいい方に作用しましたね。
らしい今季2勝目、総力戦で勝利!
岡山戦ではキーパーは前節と同じく福井光輝選手、キム・ジンヒョン選手は控えに回ります。中盤の中島元彦選手、田中俊太選手、北野選手は外せない存在になってきました。前線は左からチアゴ選手、ハットン選手、ルーカス選手のトリオ。
先制点は試合開始直後の高速カウンターからチアゴ選手、なんですが半分はハットン選手のゴール。彼は試合中ずっと相手最終ラインと駆け引きして疲弊させるのが仕事、なのでボールを奪ってカウンターの起点になれた。ずっとやっていたことが結実した瞬間です。
岡山は長いボールをフィジカル最強のルカオ選手に当てるのが基本で最終ラインの進藤亮佑選手、畠中槙之輔選手はキツい仕事をすることになりました。畠中選手はルカオ選手の決定機を防ぐ大活躍をみせますが負傷、西尾隆矢選手に後を託します。
今シーズン、選手が負傷しているからかコンビネーションを確認しているからか、毎試合のようにセンターバックの組み合わせが変わっています。絶対的な存在がいない代わりに誰が出てもパワーが落ちない。1失点はしましたけれど、最後の最後までラインを揃えて2失点目を回避。前半アディショナルタイムにはセットプレーから勝ち越し点も奪えました。
後半、一番苦しかったのは福井選手の負傷交代でした。岡山の幻のゴールも肝が冷えましたけど、選手の、しかも頭部の負傷は選手生命、ことによっては命そのものに関わる可能性があります。チームの士気も下がる絶体絶命の状態でも、セレッソにはキム・ジンヒョン選手がいました。プロ入りからほぼずっと先発キーパーとして活躍していたレジェンドが後半スクランブル、とても難しい仕事だったでしょうがなんとかしのぎ切り、久しぶりの勝利に貢献してくれました。
これまでのセレッソは自分たちのサッカーができていながら勝ちきれませんでした。ミスの多さ、相手との相性、決めきれない決定機、色々な問題が一度に出て修正に時間がかかりました。けれどようやく、自分たちのサッカーで勝ちきれた成功例が生まれました。このやり方で勝てるんだという自信が、チームの雰囲気を変えてくれることを信じています。
運命の4月
岡山に勝利したことで一息つくことができましたが、次の相手は難敵広島。そこを超えても鬼門である鹿島が待ち構えています。まだ序盤戦ですが、ここから勢いを増していくのか、また下位をさまようことになるのか、前半戦の立ち位置を決める天王山になるのは間違いないでしょう。
畠山選手、福井選手ともに軽症とのこと、彼らがピッチに戻って来るころにはもっともっといいチームになっていてほしいです。それでは!
写真・文:牧落連