こんばんは、セレサポ.netライターの牧落連(まきおちれん)です。
秋のはしり、10月2日はセレッソ大阪、ガンバ大阪両クラブのチーム、サポーターにとって特別な一戦、大阪ダービーが開催されます。一度延期になった分、余計待ち遠しく感じましたよね。
よそのサッカーファンにとっては「勝ったほうが強い方の大阪と名乗られる試合」程度の印象しかわかないのですが、当事者にとってダービーは「それ以上の何か」。特に今のセレッソにとっては勝利することが、そして自信を取り戻していくことが大切です。
事実としてセレッソは大阪ダービーに勝利することで、常に勝ち点以上の何かを得てきました。決戦を前にそのおさらいをしていきましょう。
2011年5月24日 AFCチャンピオンズリーグ ラウンド16 G大阪0-1C大阪(万博記念競技場)
リーグ戦ではないですが、このダービーは外せないでしょう。前年のセレッソは中盤に香川真司(この年ボルシア・ドルトムントに移籍)乾貴士、家長昭博、清武弘嗣と中盤に豊富なタレントを揃え躍進。AFCチャンピオンズリーグ出場権を獲得しました。
2011年シーズンはリーグ戦の両立に苦戦しながらも予選リーグを突破、決勝トーナメントに進出することに成功します。そんなセレッソの眼前に立ちはだかったのがガンバ大阪でした。アウェイでの一戦はスコアレスながらヒリヒリする試合だったのを覚えています。
後半40分、数少ないチャンスを現コーチの高橋大輔が豪快に決めたとき、歴史が変わった気持ちになりました。AFCチャンピオンズリーグはラウンド8で敗退してしまいましたが歴史に残る一戦だったのは間違いがないところです。
その後、セレッソは力のある若手選手が次々と才能を開花させていきます。2012年には徳島からレンタルバックした柿谷曜一朗(現徳島)ユース出身の山口蛍(現神戸)扇原貴宏(現神戸)東京ヴェルディで経験を積んだ杉本健勇(現大宮)らがレギュラーに定着し、2013年には彼らの活躍で再びACLチャンピオンズリーグ出場をつかみ取っています。
2014年シーズンの迷走がなければ、彼らはもっと早期にセレッソに初タイトルをもたらしていたかもしれません。
2017年10月8日 ルヴァンカップ準決勝2nd leg G大阪 1-2 C大阪(パナソニックスタジアム吹田)
2017年のセレッソ大阪は前年昇格したばかりでしたが、ユン・ジョンファン監督のもと鍛え上げられたチームは最後まで走り切る戦えるだけのメンタルとフィジカルを持っていました。
ここまで無敗で来たルヴァンカップ、準決勝の相手はまたしてもガンバ大阪。ヤンマースタジアム長居での1st legは2-2の引き分けだったため、決勝進出には3点以上奪っての引き分けか勝利が必須条件でした。
前半、柿谷曜一朗(現徳島)のゴールで先制したものの後半同点に追いつかれ試合はアディショナルタイム。誰もが敗退を覚悟した最後のワンプレーで木本恭生(現FC東京)が勝ち越しゴールを奪い形勢逆転、セレッソは奇跡ともいえる展開で決勝進出を決めます。
この勢いは衰えることを知らずルヴァンカップを獲得、この年セレッソはついに初タイトルを手にします。天皇杯でも延長戦まで粘って優勝、クラブにとって最高のシーズンになりました。
2017年シーズンまでリーグ戦での大阪ダービーは9勝19敗4分と大きく負け越していましたが、この試合で流れが変わります。以降は7勝5敗2分、特に2019シーズンのヤンマースタジアム長居でのダービーから2023シーズンのヨドコウ桜スタジアムでのダービーまでは7勝0敗2分とむしろお得意様になっていました。
10代20代の若いサポーターが知る大阪ダービーでの強さは、この歴史的な勝利から始まったんですね。
2024年J1リーグ第12節 G大阪 1-0 C大阪(パナソニックスタジアム吹田)
さて、前回の大阪ダービーです。この一戦はこれまでの大阪ダービーと違ってガンバ側が「今日こそ勝ちたい」という気持ちを強く持っていたと思います。前述の通りリーグ戦では長い間セレッソに苦渋を舐めさせられていましたし、試合前の順位もセレッソが5位、ガンバが8位でした。
失点は完全に崩されたものではなく、一つのミスを相手に突かれてしまった不運なもの。でも、それでもダービーに負けることは許されないものなんです。ここまでキーマンとして活躍していた毎熊選手、登里選手のアクシデントもあり、ダービー敗退後のセレッソは要所要所で勝てないまま優勝争いからもACL:出場権争いからも脱落していきました。現在ガンバが上位争いに食い込んでいるのとは対照的です。
すべてを得るか、すべてを失うかの一戦
話題を最初に戻しますね。今のセレッソは守備戦術も攻撃オプションの幅も一考するべき状態ですが、何より選手個々人が「これをすれば大丈夫」という自信を失っている状態です。それは明々白々でしょう。
サポーターもこれだけひどい試合を見せられ続けたら、ブーイングしたりヤジ飛ばしたくなる気持ちもわかります。けれども、この一戦は、この90分間+αだけは、心ひとつに応援してほしいと願っています。
勝てば自信も、戦う気力も、失いかけたプライドも取り戻すことができます。負ければこれから先何年も苦手意識を持ったまま過ごすこともあります。すべてを得るのか、すべてを失うのか、この90分間+αですべてが決まります。それでは。
写真・文:牧落連