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大久保嘉人~ストライカーと家族たちのホームラストマッチ~

大久保嘉人という男の魅力を一言で表すなら「驚き」以外にない。国見高校サッカー部時代はエースとして2000年の全国高校サッカー選手権を制し全国優勝、鳴り物入りでセレッソに入団すると2年目にはいきなりエースとして活躍、森島寛晃や西澤明訓とともに1年でのJ1復帰に貢献する。

J1に舞台を移しても勢いは止まらず二桁得点、2003年4月26日には一部のサッカーマニアから「世紀のバカ試合」と呼ばれるホーム浦和戦で2ゴールを奪い、0-3からの大逆転劇を演出している。予想を超える驚きでサポーターの心を掴むのが大久保嘉人の魅力なのだ。

こうしてただ結果だけを書き連ねていくとサッカー界のエリートなのではと思ってしまうが、実際は泥臭く負けず嫌いな九州男児そのもの。これ以上無いくらいハチャメチャな上に熱くなりやすい性格ゆえに、ピッチ内外で話題の中心でありつづけた。

ちょっとした小競り合いは日常茶飯事で、カードもたくさんもらった。同じく現役時代、熱い性格で有名だった田中マルクス闘莉王も「アイツはイライラしやすい性格だからね。」と苦笑いする始末だ。アンタも人のこと言えないだろう、グギギギ。(出典:闘莉王TV

恋愛にも熱いところがあるようで、22歳で高校時代の同級生である莉瑛婦人と入籍している。あの頃は局アナやモデルと付き合ってるJリーガーも多かったらしいが、わき見せずスパッと結婚するあたりも本当に嘉人らしい。

突然の復帰、突然の引退

話を本筋に戻そう。

そんな嘉人のことだから今年セレッソ大阪に復帰すると聞いた時も驚きはしたが、すぐに「本当にらしいな」と笑える自分がいた。移籍すること10回、所属したクラブは8つ、2020年シーズンは東京ヴェルディでプレーし無得点。口の悪い人間は「終わった男」と言っていた。

けれど、実際プレーしてみないとわからないのが大久保嘉人という男。セレッソに復帰した今シーズンは開幕戦からゴールを決め、あっという間に5ゴールを決めてせた時は「ざまあみろ!」と得意げに笑ったものだ。

しかし、その後セレッソは苦戦を強いられる。4月18日の浦和戦を最後にリーグ戦11試合連続勝利なしのどん底状態に。8月21日の仙台戦には勝利したものの、次節湘南戦で1-5の大敗を喫し、レヴィー・クルピ監督退任、小菊昭雄コーチの監督昇格が発表された。

そんな一大事を救ったのも嘉人だった。小菊体制になってからは先発メンバーを外れることが多くなったが、9月8日の札幌戦で今季6ゴール目を決めて勝利に貢献するなどJ1残留争いに貢献した。ベンチメンバーになっても明るさを失わず、チームを明るくもり立てる嘉人を見て「やっとベテランって感じになってきたな」と安心していた。

けれど、甘かった。11月19日に突然の引退宣言。20日の会見では「引退を決めたのは16日」だと語っていた。ホント人を驚かせるのが得意なヤツだ。

ルヴァンの借りを返すために

リーグホーム最終戦、嘉人のホームラストマッチを観るために、好きな選手の最後のプレーを観るために、多くのファンがヨドコウ桜スタジアムへとかけつけた。観客数10,313人は今季最高の数字だ。

対戦相手の名古屋グランパスにはACL出場という目標が残っていた。空気を読むなんて考えは毛頭ない。両チームにとって落とせない試合はとんでもなく刺激的な展開となった。

前半は一進一退、お互いに何度か決定機を作るものの決めきれずにスコアレスとなったが、後半開始直後に名古屋のFW柿谷曜一朗が魔法のようなバイシクルシュートを放ち失点。曜一朗は嘉人を誰よりもリスペクトしている選手の一人。モチベーションが高かったのだろう。

このゴールで私の心に火がついた。名古屋にはルヴァンカップ決勝で敗退した因縁の相手だ、そんな相手に二度三度と負けるわけにはいかない。勝ちたい、できれば嘉人のゴールで勝ってほしい、そう思った。

残念ながらその願いは叶えられなった。MF藤田直之の強烈なダイレクトミドルが決まった直後に選手交代のアナウンス。「暴れん坊」と呼ばれた男には不釣り合いなほど静かにピッチを去っていった。

嘉人に決めてほしかった逆転ゴールはDF西尾隆矢が決めてくれた。今季成長株の20歳最、嘉人がプロ入りした頃に産まれた選手が嘉人のホームラストマッチを勝利に導いてくれたのはなにかの縁なのだろうか。

老兵は死なずただ去りゆくのみ……長男くん四男くんをなんとかしてくれ

試合後はいたってシンプルなホーム最終戦のセレモニーのあと、その倍ほど丁寧に用意された大久保嘉人の引退セレモニーがおこなわれた。ピッチ中央に設けられたマイクの前に立った彼は穏やかで、104枚のイエローカードと12枚のレッドカードを食らった暴君とは思えない様子だった。

不器用なスピーチの後は、ご家族が花束を持って登場。どうやらサプライズだったようで、途端に嘉人は号泣してしまった。引退会見でも「泣かない」と豪語しながら一言目でタオルがぐちゃぐちゃになるほど泣く涙もろい、そういう男なのだ。

最後は大久保家と選手、スタッフ全員で場内一周。

敗れてしまったにも関わらず名古屋サポーターも多くの人が残ってくれていて、彼のため応援ボードを掲げてくれた。

しかし……大久保家の4人の子どもたちはみな個性派だ。SNSで嘉人のモノマネを披露してくれた明るくて元気な長男くん、しっかり者の雰囲気のが漂う次男くん、父のために単身大阪に駆けつけた三男くん。

とりわけ四男くんのクセの強さは特筆モノで、セレモニー中もアウェイスタンドに向いてガッツポーズしたり、スタンドのサポーターにお手振りをしたり、嘉人のチャントに合わせて踊ってみたり。あまりにおどけすぎるので、しまいには長男くんにマフラーで縛り付けられていた。

こんな自由な引退セレモニーもそうそうないけど、嘉人らしくて悪くない出来だった。なんだかわからないまま終わった方が寂しくなくていい。

「引退後はゴルフで80切りたい」とか言っていたけど、嘉人のことだ、すぐにボールが蹴りたくなるに違いない。ひょっとしたら遠くない将来、コーチとして若手を鍛えることもあるかもしれない。

彼の子どもたちや教え子たちはどんなサッカーをするのだろう、どんな選手になるだろう。自分自身を超えるストライカーは生まれるんだろうか。人を驚かせるのが得意な嘉人のこと、そんなワクワクする未来も十分にありえる話だ。

 

写真・文:牧落連

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