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【2025シーズンマッチレポート】第19節清水エスパルス戦「北野颯太の“終わりなき旅”」

こんばんは、セレサポ.netライターの牧落連(まきおちれん)です。

今季のセレッソ大阪をここまで支えてくれたユース育ちのエース、世界を相手に戦うこととなったワンダーボーイ、北野颯太選手の国内ラストマッチを余す所なくレポートしていきたいと思います。

セレッソサポーターが育んだ才能

セレッソはこれまでたくさんの選手を海外クラブに送り出してきました。西澤明訓選手、大久保嘉人選手、香川真司選手、乾貴士選手、清武弘嗣選手、柿谷曜一朗選手、山口蛍選手、南野拓実選手、坂元達裕選手、毎熊晟矢選手と、主だった選手だけでも錚々たるメンツです。

彼らと北野選手の違いを書くとき、ハナサカクラブの存在は外せません。2007年に始まった育成、ユース年代に特化したファンクラブがハナサカクラブです。会費がすべて育成年代のための財源として扱われる唯一無二の存在なんです。

これまで育成年代が遠征に行くとなると、旅費の一部はご父兄が負担するのが当たり前でした。海外遠征なら航空券やホテル代がそのまま負担になっていたんですね。ハナサカクラブが発足してからそういった負担は半額以下まで抑えられたといいます。才能はあるけれど家庭の事情でサッカーが続けられない、そんな子どもたちにもチャンスが与えられるのは大きなことです。

北野選手は小学生4年生でセレッソに加わって20歳で渡欧するまでの間、このハナサカクラブ、つまりセレッソサポーターの温かさによって育てられた選手なんです。そんな「ウチの子」の旅立ちに、思うところのない人なんていないですよね。

8番の集うヨドコウ桜スタジアム、乾貴士の覚悟

そんな旅立ちの一戦、J1リーグ第19節の相手は清水エスパルスとなりました。清水にはかつてセレッソに在籍した中原輝選手、カピシャーバ選手、そして乾貴士選手が所属しています。

乾選手は2022シーズンにセレッソのエースナンバー8番を背負った選手です。今季背番号8をつけている香川選手とのゴールデンコンビで2016シーズンのJ2を席巻し、今のセレッソを作った功労者でもあります。一方で起用法を巡って当時の小菊監督と衝突し、後味の悪い退団をした因縁浅からぬ相手でもあります。

試合のゲストとして柿谷曜一朗もスタジアムに現れました。セレッソの現会長森島寛晃氏を加えると、清武選手(現大分)を除く歴代の背番号8が集う特別な試合。この日が北野選手の旅立ちの日だなんて不思議なものですね。

試合開始1時間前には芝生の状態をチェックするため、清水の選手がピッチに現れました。乾選手はセレッソゴール裏からの歓声とブーイングを一身に浴びると、喜びと切なさの混ざりあった大人びた表情でいました。

若い頃なら不快そうにしていただろう乾選手が、すべてを受け止めた表情でいたのが印象的でした。海外の厳しい環境で生き残ってきたその経験が、彼を大人にしたのでしょうか。

「颯太のために」チーム一丸となった90分

ご存知の通り、試合は4-2でセレッソの圧勝となりました。先制点を許したものの、高橋仁胡選手の同点ヘッド、中島元彦選手の逆転ヘッドが決まり、後半には北野選手の素晴らしいアシストでハットン選手、ルーカス・フェルナンデス選手がゴールを奪いました。

北野選手自身は前半早々のPKを決めきれず悔しい思いをしましたけれど、それが逆にセレッソというチームをひとつにしたように感じます。直後のコーナーキックを高橋仁胡選手が決めて同点にしてからはパパスセレッソらしい攻撃的なプレーができていました。

キャプテンに指名された北野選手はチームを勝たせるために、周囲の選手は北野選手にゴールを決めてもらうために必死でした。試合を観た人間なら誰でも、北野選手を中心にチームが回っていたとわかるはずです。

残念ながら北野選手のゴールは見られませんでしたが、彼らしいスペースを作る動き、スペースを活かす動きでチームに貢献し、ラファエル・ハットン選手とルーカス・フェルナンデス選手のゴールをアシストしました。

いつもと変わらず、全力プレーですべてを出し切った北野選手。彼が選手交代でピッチを去るとき、チームメイトたちと抱擁する姿には胸を打たれるものがありました。

本来リードしているチームの選手交代が迅速に行われない場合、主審が警告やカード提示をするものです。しかしこの試合主審をつとめた木村博之氏は清水の選手が抗議するのを制止してまで十分な時間を作ってくれました。ジャッジを巡って批判されることの多い審判団ですが、この判断には感謝しかありません。

涙のセレモニー

北野選手の最後のお仕事は、ここまでともに戦ったチームメイトとサポーターへのお別れスピーチでした。もうこれは公式YouTubeチャンネルをご覧いただきたいです、20歳の青年が2万人の観衆の前でしっかり自分の気持ちを伝えられる、それだけで素晴らしいことです。

ちなみに、セレモニーのBGMには、かつて香川選手がドルトムントへ旅立った時と同じ、Mr.Childrenの『終わりなき旅』が使われました。北野選手が憧れの先輩を意識して、狙って選曲したそうです。

セレモニーでのチームメイトの立ち居振る舞いも印象的でしたね。海外で長くプレーした経験からか終始穏やかな香川選手、表情を崩すまいとしながらも落涙する上門選手、そして同い年の仲間の旅立ちに涙が止まらずチームメイトに励まされる阪田澪哉選手。

北野選手と阪田選手が抱きしめ合う時間をもうけようと奮闘する登里享平選手やチームメイトたちを見ていると、このチームを応援してきてよかったと再確認できました。

それと、書き記しておきたいことがもう一つ。敗戦で落胆しているに違いない清水サポーターの方々にも感謝したいです。この長いセレモニーを見守り、北野選手に温かい声援までいただいたことは忘れません。

託されたユニフォーム

最後に、北野選手らしいエピソードを。場内一周の際、北野選手はユニフォーム姿の少年に自身のユニフォームを託しました。直後のインタビューでは知り合いなのか、アカデミーの後輩なのかとインタビュアーに質問されたそうですが「面識はありませんでした、けれど(試合前から)ずっと欲しがっていたので。」との返答。

これは推測でしかないですが、北野選手はセレッソをたくさんの人に、たくさんの未来ある子どもに託したかったのではと考えています。柿谷曜一朗さんも幼いころ選手がバスから手をふってくれたのがセレッソを知るきっかけだと話していましたよね。そういうフックを作りたかったのではと考えています。

ユニフォームを託された少年が大人になるまで少なくとも10年はかかるでしょうけど、見てみたいですよね、彼が北野選手の夢を引き継ぐ未来を。

 

写真・文:牧落連

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